【光・色】構造色?シャボン玉と玉虫の色は一緒【干渉】

こんにちは、まっつんです。

本日は光・色関連で「構造色」の原理についてお話しします。

 

みなさん子供の時には良くシャボン玉で遊びましたよね。子を持つ親なら、大人になってからも子供と一緒に遊んだりしているんじゃないでしょうか。

そんなシャボン玉は大きさや見る角度によって部分的に紫色のような緑色のような、様々な色に見えませんか?

同じように雨の日にガソリンが漏れていた場所も、シャボン玉のようにいろんな色に見えます。

他にも玉虫の身体は緑色、モルフォ蝶の羽根の色は青色ですが、このような色、なんだか不気味に感じないでしょうか?(私だけ?)

 

これらの不思議な色はすべて構造色と呼ばれるものです。構造色という単語は普段生活しているうえではめったに聞きませんし、高校や大学でも習うようなモノでもないため初めて聞く人が多いと思います。

私も大学院での研究生活の中で少しふれたけで、以来見かけません。

 

本記事ではそんな「構造色」の原理ついて解説したいと思います。読者の皆さんには、そんなものがあるんだなあと思っていただけるだけでもうれしいです。

構造色を理解するうえで重要なキーワードは以下の2つです。

①干渉
②微細周期構造

 

干渉

干渉-interference

「光・色」をテーマにした記事ではこれまでに「散乱」、「エネルギー」に着目して原理を説明してきました。本日は「干渉」について扱います。

干渉とはザックリ説明すると、複数の波が重なり合って本来の波よりも大きくなったり小さくなったりする現象のことです。詳しく知りたい方は高校物理の本かwikipediaへ。

マンガでイメージすると以下のようになります。2つ以上の波が重なるとき、波の高低が一致すればさらに大きくなり、波の高低が逆で一致すれば波は消滅します。

ここで重要なことは、いい感じの波が重なり合うことにより本来の波よりも大きな波が出来上がるということです。

 

多重反射

光は以前の記事でも触れているように波としての性質を持っています。つまり光も干渉します。

ここで薄い水の膜(薄膜)に光を照射した場合を考えてみます。

光が薄膜に入射すると、反射する光(反射光)と屈折しながら薄膜中を進んでいく(屈折光)に分かれます。

さらに屈折光は薄膜の(入射した場所と)反対側の膜界面で再び反射と屈折が生じ、これらが繰り返し起こります。

このように薄膜に光を照射すると薄膜の界面で多くの反射が起こります。これを多重反射といいます。

 

干渉/薄膜

上記の干渉と多重反射がどのように関係しているのでしょうか。

多重反射をもう少し簡略して図に示すと以下のようになります。

 

入射光は一度、薄膜中を進行したあと反射するものと、薄膜中を進行せず反射する光が存在します。

すると屈折光が私たちの目に届くとき、反射光よりも図の赤い線の分だけ多くの距離を進んでいます。この距離を光路差といい、この光路差が非常に重要です。

(光路差は物質の屈折率と入射角度、膜厚がキーポイントです。)

上記の干渉で説明したように、波(光)がうまく重ならないと波(光)は打ち消しあってしまいます。

 

逆に言えば、この光路差が光の波長の整数倍のとき、その波長の光は上手く重なり合うため大きな強度を持つようになります(いわゆるブラッグ反射というやつです)。

青色は短い波長、赤色は長い波長といった具合に、光は様々な波長が混ざっています。そのため薄膜の厚さや屈折率などが変われば強調される色が変わります

 

シャボン玉

シャボン玉は一層の薄膜から形成されます。シャボン玉の液体は無色透明ですが、上記の薄膜の干渉により見方によってはカラフルな色に見えます。

さらにシャボン玉の形状は基本的には球体ですが、風の影響などによりその形状や膜厚が変化します。また私たちがシャボン玉を見る角度も刻々と変化することも重なり、緑色など一定の色に見えるのではなくカラフルな色に見えるのです。

 

微細周期構造

さて、シャボン玉は1層の膜からなる薄膜ですが、1層以上の多層膜からなる薄膜の場合はより干渉しあうため、見える色はさらに鮮明になります。

その最たる例が玉虫の身体の色です。

 

画像の右側は玉虫の身体をものすごく拡大した写真です。画像のように灰色と白色の層が交互に積層されています(この層の色は実際の色ではなく、電子密度差のコントラストを表しています)。この周期構造(灰色と白色の厚みの合計)は約160ナノメートルです。

このようにナノメートルスケール(1メートルより1000000000分の1小さい単位)での周期構造を微細周期構造などと言ったりします。

このような微細周期構造を形成しており、屈折率もちょうど良い場合に鮮明な構造色を観察することが出来ます。

一方でモルフォ蝶の場合は、玉虫のような多層の周期構造ではありませんが、その羽根は図3のような周期構造を形成しています。この周期構造により光が反射、干渉することで鮮明な青色の羽根として観察されます。

 

構造色の応用例

「色」に関する技術ですので、車(レクサス)の塗装に使用する塗料や、インクを使わずカラー印刷する技術として使われています。

構造色の大きな特徴は、鮮明な色が何十年たっても色あせないことでしょう。

 

普通のインクや塗料の場合、太陽光(紫外線)により色を発する色素成分が分解されてしまい本来の色味を長い期間示すことが出来ません。

昔の商店街に貼ってあるポスターが良い例です。

 

一方で構造色の場合は、その微細周期構造を破壊することは容易ではないため長期間にわたって鮮明な色のままです。実際に法隆寺の玉虫厨子に使われている玉虫の羽根は、1000年以上たっても輝き続けているといわれています。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。構造色についてなんとなくでも理解できたでしょうか。

大事な点は以下の2点です。

・特定の光の波長が干渉によって強くなる

・微細周期構造により色あせない色を発現する

 

余談ではありますが、シャボン玉の形状が球体となる性質(極小曲面)を利用した面白い実験ができます。いつか記事にしたいと思っています。

光や色に関して以下のような記事も書いています。ぜひ読んでみてください。

空が青いのはなぜ。

雲が白いのはなぜ。

炎色反応の原理とは。