【AI】シンギュラリティは到来しない、でも仕事は奪われる【読解力】

みなさんこんにちは、まっつんです。本日紹介する本はこちら!

AI vs. 教科書が読めない子どもたち」 新井紀子 著

「教科書が読めない子どもたち」とはつまり「読解力がない子ども」を意味しています。最近の子どもは読解力がないのか、ゆとり教育の弊害か、などと思われた大人の読者の方々、私たちも例外ではありません

大人になれば(長く生きれば)読解力が身につくわけではないため、読解力がない子どもの時のまま大人になっている可能性もあります。

また日本だけでなく世界中で学歴社会と言われており、特に日本の場合は新卒一括採用時に学歴フィルターを設けている企業が多くあります。なぜでしょうか?勉強ができるということはどういうことなのでしょうか?

本書では、学校の教科書や企業の規則・マニュアルに書かれている文章の意味を正確に理解する読解力が非常に重要であり、読解力がないとこの先のAIが主軸になる未来で生き残れないと主張しています。

本書に書かれていることは生易しいものではなく、新井先生の熱量とともに日本への警告が記されています。

それでは内容を見ていきましょう。

 

AI時代、シンギュラリティ到来は到来するのか

昨今のAIブーム、とりわけ機械学習やディープラーニングの開発により私たちの生活は劇的に変化し、より「便利な社会」になっています。そして近い未来にシンギュラリティが到来し、私たち人間の仕事が奪われてしまうかもしれない…という意見をよく聞きます。

しかしご安心ください。私たちの生きる時代においてはシンギュラリティは絶対に到来しない、と本書で断言しています。

シンギュラリティとは正確にはtechnological singularity、「技術的特異点」。AIが自律的に、人間の力を全く借りずに、自分自身よりも能力の高いAIを作り出すことができる地点のこと。

   

シンギュラリティが到来しないと聞いて安堵しましたか?シンギュラリティは到来しませんが、近い将来人間の多くの仕事がAIに奪われると予想されます。

なぜか。

それはAIの本質、AIが出来ることと出来ないことを理解する必要があります。

 

東ロボの挑戦とAIの限界

2011年に著者の新井先生主導の「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトが開始されました。10年計画ですので残り1年程度です(現2020年9月)。

東大はさすがに無理でしょ…と思いつつも、近年のディープラーニングやらを見ていると本当に合格してしまうのではないかと思ってしまいますね。

しかし2011年当初から、新井先生を含めプロジェクトメンバーは誰一人として東大に合格することは不可能だと考えていました。

そもそも東大の試験に合格することが目的ではなく、AIには何がどこまで、どのように出来るのかというAIの可能性を探ることが真の目的でした。

とはいえセンター試験では偏差値57、東大模試の数学で6問中4問を完答し偏差値76をたたき出すことは出来ています。センター試験の偏差値57はMARCH程度のレベルです。

AIすごいですね。ここまで試験問題を解くことが出来ても、やっぱり今のAI技術では東大合格は不可能です。もう少し頑張れば合格できそうじゃないか!と言いたくなりますね。

昔から言われていることですが、AI(ないし機械)は言葉の意味や常識を理解できません。この壁が非常にとんでもなく大きいんです。

 

常識の壁

常識がない?言葉の意味が理解できない?

いやいや、Siriは私の大切な話し相手ですよ!?会話できているんだから、意味を理解しているに決まっている!

このように熱弁される読者がいるか分かりませんが、Siriも同じく意味を理解して応答しているわけではないんです。

例えば「近くのおいしいイタリア料理店」と「近くのまずいイタリア料理店」と聞いてみてください。どちらの検索結果も同じ店を選んだのではないでしょうか。

Siriに使われているのは音声認識技術情報検索技術です。とくに情報検索技術は確率と統計に基づいています。

上記の例の場合、「近く」「おいしい」「イタリア料理店」のように分解して検索します。しかし「まずい」のような普段私たちが検索しないワードは重要度が低いと統計的に判断され、検索項目から除外されてしまいます。

その結果、「近く」と「イタリア料理店」のように検索され、「おいしいイタリア料理店」も「まずいイタリア料理店」も同じ検索結果になってしまったというわけです。

他にも、英語の会話の中でcoldという単語が出てきたとします。文脈上「寒い」か「風邪」どちらでも取りうる場合、もし季節が夏という前提があれば常識的に寒いはありえないから風邪だろうと私たちは判断できます。

しかし機械には常識がありません。夏がどうかなんて考えません。確率と統計に基づいて「寒い」と判断してしまうことがあるんです。

 

読解力調査、そして見えてきた読解力のない子どもたち

さてAI技術の研究を行う一方で、了承をもらった全国の中高生や大学生を対象にした読解力調査も新井先生は行っていました。

例えば大学受験を終えたばかりの学生に対して次のような問いを出しています。

Q.偶数と奇数を足した答えは偶数と奇数どちらになるか?理由も答えよ。

みなさんは分かりますか?当然、奇数であることは明らかですが理由となるとイマイチ分からないと思う方もいるかもしれません。

詳しい解説は本書を手に取ってみて下さい。
【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

ただの四則演算の説明さえも論理的に説明できない大学生が66%もいたことに驚きですね。何も微分や積分を聞いているわけでもないんですよ。

その他、中高生向けのRST(リーディングスキルテスト)でも衝撃の結果をたたき出しています。こちらも詳細は本書を読んで頂くとわかりますが、背筋が凍る思いになります。

私が唯一間違えてしまった問題を紹介します。

次の文を読みなさい。

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文脈において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。

セルロースは(   )と形が違う

①デンプン ②アミラーゼ ③グルコース ④酵素

AI vs. 教科書が読めない子どもたちより引用

正解は①デンプンです。よく読めばわかりますが、セルロースとグルコースは語感が似ているし、言葉が違えば構造も違うだろうと早合点して私は間違えました。

上記の例のようにRSTでは特に難しくない文章に対して選択式解答になっています。しかし2択問題で正解率約58%を示すなど、サイコロを振って解答しているのと同じような結果を示すものが多くありました。

学校関係者の方や文部科学省の方たちは子供たちが当然教科書が読めているという前提の下で、教育指導したり教科書を作成しています。しかしこのRST調査から、そもそも子どもが教科書に書いてあることを理解できていないということが分かりました。

確かに数学の問題で、問われていることの意味が分からなければ手も足も出ませんね。私も大学の数学が途中からわけ分からなくなったことを思い出します。教科書を読んでも理解できないんですよね。きっと中高生もこんな気持ちなのかと思います。

そしてこの読解力は大人になれば伸びるというわけではありません。そのため読解力が低いまま大人になっている可能性があります。

 

読解力を伸ばす方法はあるのか

私たちに読解力がない可能性があることは分かりました。では読解力を伸ばすためにはどうすればよいのか知りたいですよね。

しかし新井先生は読解力を伸ばす方法は分からないと述べています。なんとも後味悪いですが今のところ「こうすれば読解力が上がる!」という方法が明らかになっていません。

 

読解力と学力

上記のRSTはその正答率と偏差値との相関を比較したデータも示されています。大体の問題で偏差値が高いほどRSTの結果も良い、という結果になっているようです。

つまり、教科書に書かれている文章をそのまま理解できる読解力を備えているから偏差値の高い大学へ進学することが出来るのです。

 

企業が求める人材と学歴フィルター

昨今の大学進学率は50%を超えており、世代ごとの半数近くが大学を卒業後、新卒一括採用をへて企業に就職しています。

企業が求める人材として確かにコミュニケーション能力も大事ですが、マニュアルや作業標準書に記載されている内容を正確に理解できることもとても重要です。

つまり読解力のある学生を企業は欲しているわけですが、一番簡単な見分け方は何でしょうか。

そう、学歴フィルターですね。

偏差値が高ければ読解力があるわけではありませんが、偏差値と読解力に正の相関がみられる以上、この学歴フィルターは企業にとって正しい選択肢といえるのではないでしょうか。

 

AIと人間の仕事

ここまでで分かったことは以下の通り。

・AIは統計と確率、そして論理によって問題を解くことが得意だが、文章の意味や常識を理解できません。
・世の大半の人が、教科書を正確に読めない。

あれ?AIと人間の不得意分野が同じですね。ましてAIの得意分野に人間が勝てるわけありません。

この事実こそがAIによって人間の仕事が奪われるということなのです。

 

AIにできない新しい仕事

これまでの歴史の中でも多くの仕事がなくなってきましたが、代わりに多くの新しい仕事も生み出されました。そのためAI時代に奪われる仕事がある一方で、AIにできない仕事も増えると考えることもできます。

ではAIにできない仕事とは何でしょうか。読解力を必要とするような仕事です。しかしその読解力が足りていない人たちが多くいることが問題なんです。

仮にAIにできない仕事が増えるとして、その市場にうまく乗り込める労働力はいったいどれだけいるでしょうか。

産業革命以来多くの工場労働者の職が失われる一方で、ホワイトカラーの需要が急激に伸びました。にもかかわらず町には失業者があふれていました。

多くの労働者がホワイトカラーとして働く教育を受けていないために、新市場に吸収されなかったからです。

企業は人材不足で困る一方、社会には失業者があふれかえっている状態、そんな社会が迫っています。

 

10~20年後まで残る職業トップ25

将来残る職業も紹介されています。

1位 レクリエーション療法士
2位 整備・設置・修理の第一線監督者
3位 危機管理責任者
4位 メンタルヘルス・薬物関連ソーシャルワーカー
5位 聴覚訓練士

などです。つまり人や機械、場所、環境に応じて柔軟に判断し意思決定できるような職業です。

市場で求められる価値は常に変わり続けています。情報に絶えずアクセスしその変遷に気づいて行動する力が大事です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

私たちが置かれている状況が危ないものだと思ったでしょうか。何も考えずに生きぬくことが難しい時代ですね。

自分の専門は何か。自分には何が出来て、何が出来ないのか。これから何を身に着けていけばよいか。改めて考える時間を作ってはどうでしょうか。

以下まとめ。

・AI時代、シンギュラリティは到来しないが仕事は奪われる
・東ロボの挑戦とAIの限界。AIは論理・確率・統計が得意だが意味理解・常識は不得意。
・読解力が低い子どもたちが多くいる。
・市場で求められる価値の変遷に気づき対応することが重要。

本書以外にも、落合陽一さんが書かれた「超AI時代における生存戦略」も紹介していますのでご覧ください。

以上、 AI vs. 教科書が読めない子どもたち、の紹介でした。